富裕層のバレない脱税―「タックスヘイブン」から「脱税支援業者」まで (NHK出版新書 526) 新書    佐藤 弘幸


ここ最近連続で読んでいるのプライベートバンカー本の流れで、今回の脱税系の本を読んでみました。


まず一言で言うと世の中の税金における“ダークウェブ”的な内容を事細かく且つ、比較的体系的に書いてあります。※ダークウェブはインターネット用語で、ものすごい簡単に言うと一般人にはわからない、見れない世界ということですね。


そして、著者元国税局で課税第二部資料調査第二課(リョウチョウというらしいです。)にもいた佐藤弘幸さんです。この方、国際税務もかなり知ってます。


序章、「なぜ人は脱税をするのか?」から始まり、まずは、国内の庶民の方々が行う脱税についての解説、「水商売系の脱税の話、バー、クラブ、風俗、デリヘル」などはかなり多いみたいですね。お金のやり取りが見えにくく且つ、現金商売なので結構見つけるのが大変そうです。


そして、「宗教法人」の脱税事情、具体的なスキームなども書いてあり、非常に勉強になりました。宗教法人もヤクザのフロント企業みたいなものを信者にやらせてそこから売上を差っ引くみたいなことをやっているところもあるようです。また、あとは休眠している“宗教法人”を買い取ってそれを基に脱税なども可能なようです。

これであれば、金儲けのために宗教ビジネスを始める人間がいてもおかしくはないですね。


あとは、「中小企業の脱税について」中小だと圧倒的に相続税を如何に払わない、減らすか問題ですね。

ここまでが第一章で、著者いわく、このような庶民レベルの脱税ノウハウは当局の方が納税者側よりもわかっているので、ナメてはいけないとのことです。


まあ、そこまでテクニカルなものではないですし、所詮、国内の話なので、余裕なんでしょうね。


 第二章からが、本番です。「「富裕層」のバレない脱税」ということで、国外へのキャピタルフライトが始まったタイミング、「山一證券の破綻の翌年に外為法改定で、海外口座の開設が個人でできるようになります。」という説明から入り、海外での様々な脱税スキームの紹介です。


著者は元国税及び、現在税理士などもやっているだけあり、かなり良く知ってます。


最近話題の金(インゴット)の密輸の話もあります。ちなみに、本日、密輸集団が大阪国税局に8.5億追徴されましたね。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180828-00000088-jij-soci

この本を読んでいたので、このニュースの背景がわかり、かなり反応してしまいました。


そして、富裕層についての話、当局の富裕層への対応や、タックスヘイブンについての説明、生命保険スキームなどの説明もあります。オフショア法人を使っての相続のための大掛かりなスキームもあります。


ただ、10年ルールが適用の今は、かなり完了までに時間がかかりそうですね。とはいえ、それでも良いくらいの租税回避ができるんでしょうね。


そして、ループホール(法の抜け穴)を利用する人々についての説明。


パナマ文書やノミニー制度の話、ラブアン島、最後に国税の国際戦略トータルプラン(情報リソースの充実、調査マンパワーの充実、グローバルネットワークの充実、租税回避スキームの把握)についてです。


そして最後の第三章、「暗躍する「脱税支援ブローカー」たち」庶民的な、B勘定屋(タクシーの架空請求や、水商売の白紙領収書など)、反社を立てにする方法から国税OB税理士、国税との癒着などの話です。


そして「世界をまたにかけて脱税を支援する悪いヤツら―プロモーター」(書き方がエグい・・・)ファンドハウス、プライベートバンク、投資銀行、海外不動産ブローカー、コンサルタントと名乗る人々について書いてあります。


ちなみに、プライベートバンクの部分で、清武英利さんの「プライベートバンカー」についても触れている(ちょうどこの著者の「税金亡命」という本を同じタイミングで出版したらしいです。)のですが、著者はBank of Singaporeについてはかなり詳しく知ってます。


香港などで色々PBとお付き合いがあったんでしょうね。そして、投資銀行が該当するのが意外でした。


そしてあとがきですが、結論として「脱税はなくならない」ということです。

国税の能力、納税者のモラル、国際税務のループホールなどの理由から完璧な徴税は難しいとのことです。


そして、著者は「脱税する大人たちは、むしろ制度や執行をよく勉強していて、これなら租税回避できると判断して実行している。最近では、悪いヤツらというよりも、彼らはただの「大人の知的ゲーム」として楽しんでいるのかもしれないと私は思うようにもなっている。」「租税回避はインテリでなくては考えつかないし、プロモーターに対する報酬や海外拠点を維持する費用を出せる富裕層でなければスキームを遂行できない。つまり「持てる者」が楽しめるゲームなのかもしない。」と言ってます。


私もこれを読んで思いましたが、脱税はなくならないです。そして、特にキャピタルフライトなど海外のオフショアなどを使ったスキームは国と国との関係にもなるので、日本だけ頑張ってももうまいくいかないので、恐らくこの状況は変わらないかと思います。


そもそも国の存亡をかけてオフショアなどにしている国からしたら、都合が悪いですからね。


もう世界中の 国VS国VS国 で富裕層や企業の取り合い(誘致で)、バトル・ロワイヤルで良いと思います。(笑)


ということで、今後も「大人の知的ゲーム、持てる者が楽しめるゲーム」を続けていく感じですね。


富裕層・企業 VS 国税のゲームですね。 楽しそうです。 ついでにこの著者の書いた「税金亡命」という本も読んでみようと思います。



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by singapore2012 | 2018-08-28 22:51 | 本の紹介

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