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僕は君の「熱」に投資しよう――ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義 佐俣アンリ

前回、Rebright Partnersの蛯原さんの「テクノロジー思考――技術の価値を理解するための「現代の教養」」を読んだのと、最近VC向けに人材採用のサポートをさせていただいたこともあり、自然とVCやスタートアップにアンテナを張っておりました。


そんな中アマゾンで何やら熱いタイトルの書籍があったので、まずは、無料でサンプルを読んだところ、予想通りの熱さに引き込まれ、そのまま購入しました。


恥ずかしながら、著者のことは存じ上げていなかったのですが、大学卒業後、リクルートに入りメディアテクノロジーラボで新規事業創出などした後、VCに目覚めEastVenturesに飛び込み、松山太河さんのカバン持ちを経て、様々なスタートアップ(Freakout,Campfire)の立ち上げをサポートして2012年に27歳でベンチャーキャピタル「ANRI」を設立し、代表パートナーに就任という方です。


経歴を見ると非常に優秀な方なのですが、本人曰く「プロの凡人」だそうです。

「僕 が 凡人 で あり ながら 人並み 以上 の 成功 を モノ に し て き た のは、 勝手 に 成長 さ せ て くれる 場所 に 自分 を 位置づける「 戦術」 に 長け て い た から だ。」なかなかユニークな生き方をされております。また、非常に自然体且つ柔軟な考え方で共感を得られる部分が大分多かったです。


投資先の起業家がいるオフィスで「おーい、米、買いに行くぞ」と言って、行き詰っているであろう起業家を外に連れ出して、健康・メンタル面を管理しているエピソードは印象深かったです。私の昔の上司を思い出しました。一見、ぶっきらぼうな感じですが、ちゃんと気にかけており、しっかり状況を把握されているのですよね。


それと同時に、「勘違い し ては いけ ない。「 頑張る」 のと「 成長 する」 のは まったく 別 の こと だ。 起業家 の 大義 は 事業 を 成長 さ せる こと だ。 なにせ、 投資 を 受け た 以上、 他人 の お金 を 使っ て 事業 を やっ て いる ん だ。 頑張っ ても 事業 が 成長 しない ので あれ ば、 その 頑張り は 無意味 で ある。」というようにビジネスにおいてこだわる部分については非常にシビアです。やはり、当たり前ですがスタートアップにとって伸びることは必須なのですね。


また、企業の上場の時は嬉しくもあり少し寂しく、少し複雑な気持ちになるようです。まあ、確かに今まで二人三脚でやってきたわけですからね。でも、この本を読むにつれてVCの仕事の大変さ及び、面白さというものが少しですが、わかったような気がします。


更に、「怪物、孫正義」としてソフトバンク・ビジョンファンドの話も出てきました。資金力10兆円と米国国内のVCの投資額の合計に匹敵するようです。そこから投資家たちの天下一武道会=The Midas Listの話になります。毎年発表される最も影響を与えたベンチャーキャピタリスト100人のランキング。全然知っている人がおらず、4位のベン・ホロウィッツと43位のピーターティール89位マーク・アンドリーセンくらいしか知りませんでした。


あとは、課外授業としてあった技術系スタートアップ投資担当の鮫 島 昌 弘さんの話が良かったです。大学で研究している30-40代の研究者で面白い研究をしている人に「事業化しませんか?」という話を持っていくとのこと。彼自身研究室にいた経験があり、大学で博士号を持つ優秀な人に居場所がない現状に疑問を感じ、研究 者 が 社会 に 出 て いく ため の サポート を する こと、 つまり 起業 に 誘う というキャリアを選んだようです。技術系スタートアップはネット系に比べ遅れており、エコシステムも生まれていないということなので、大変だとは思いまが、是非、頑張って欲しいです。ちなみに、話の中で米国のセラノス社という投資家を欺いていた技術系スタートアップの話も出てきました。このベンチャーについては「Bad Blood」という書籍が出ているので読んでみたいと思います。


いやーでもANRIのように日本の優秀な若者に投資をして起業をさせてそれなりのかたち(規模、企業価値)にしてExitしていくようなVCの人々がいると思うと日本の将来はまだまだ明るいと感じました。


私は海外で日本人の方々向けに仕事の紹介をしておりますが、日本人は優秀な人々の割合がが高いと感じます。マナー、モラル、コミュニケーション能力などのバランスが非常に良く、そして、地頭が良い。


こういった人々がもっと日本や世界で活躍するようになれば良いなと思っております。


あと、個人的には佐俣アンリさんがThe Midas Listに入る日を楽しみにしております。


コロナ禍で気持ちが暗くなりがちな今日この頃ですが、久々に元気が出る本でした。



by singapore2012 | 2020-10-18 22:53 | 本の紹介

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